
「シフトが毎月変わるのに、有給日数はどうやって決めるの?」「有休を取った日の給料計算が分からない」——飲食・美容・小売業など、シフト制を導入している事業所からよくいただくご相談です。
実は、シフト制における有給休暇の扱いは、国レベルでも課題として議論が進んでいます。令和8年1月9日、内閣府主催の「働き方・人への投資ワーキング・グループ」では、「シフト制における適正な年次有給休暇の取得」をテーマに、フランチャイズ業界団体・社会保険労務士会・弁護士法人・厚生労働省がそれぞれ資料を提出し、現場の実態から法的課題まで幅広く議論されました。
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有給休暇の基本的な仕組みは【基礎編】でお伝えしましたが、シフト制ではそれだけでは解決しない「現場ならではの壁」があります。今回はシフト制特有の課題と、トラブルを防ぐための運用のヒントを整理します。
シフト制では、なぜ有給管理が難しくなるのか
現行の労働基準法は、労働日があらかじめ決まっている働き方を想定して設計されています。そのため、月ごとにシフトが変わる働き方とのあいだには、いくつかのミスマッチが生じます。
よくある「3つの壁」を確認しておきましょう。
壁① 付与日数の計算が曖昧になりやすい
有給休暇の付与日数は「所定労働日数」をもとに決まります。しかしシフト制では、契約時に労働日数を確定させず、毎月のシフト表で初めて決まるケースが多く、基準となる日数がはっきりしないことがあります。
勤務日数が契約上の日数より多いスタッフから「もっと付与されるべきでは?」と不満が出たり、逆に事業主側がシフトを意図的に調整して付与日数を減らすといったトラブルにつながることもあります。
【対応のヒント】
勤務日数が月によってばらつく場合は、直近6か月の実績出勤日数をもとに週あたりの所定労働日数を算出し、比例付与の区分を判断します。契約書の日数ではなく「実態」を基準にすることで、スタッフとのトラブルを防ぎやすくなります。
壁② 有休取得日の給与計算が複雑
有給休暇を取得した日に支払う賃金には、主に3つの計算方法があります。シフト制ではそれぞれに一長一短があるため、どれを選ぶかを事前に整理しておくことが大切です。
(ア)通常の賃金方式(シフトの予定時間 × 時給)
すでにシフトが確定している場合は、「その日の予定シフト時間 × 時給」で計算するのが原則です。スタッフにとって分かりやすく、計算もシンプルです。
一方で、勤務時間が長い日に有休の申請が集中すると、シフト管理が難しくなるというデメリットもあります。(イ)平均賃金方式(直近3か月の実績をもとに計算)
就業規則で「有給取得時は平均賃金を支払う」と定めている場合に使用します。
勤務時間にばらつきがある場合の公平性は高まりますが、計算が煩雑になりがちです。また、「働くより手取りが少なくなる」とスタッフが感じるケースもあり、不満の原因になることがあります。(ウ)健康保険法に規定する標準報酬月額の1/30に相当する金額(労使協定が必要。かなり特殊)
ここまでは以前の記事でもご紹介した、法律で決まっている計算方法です。
勉強会では(イ)を少し実用的にアレンジした方法も紹介されています。
(エ)平均労働時間方式(労使協定が必要)
「過去の実績に基づく1日平均労働時間 × 時給」を支払うルールです。
たとえば過去1年の平均が5時間であれば、どの日に有休を取っても「5時間分」の賃金を支払います。取得日による不公平感をなくせるうえ、人件費の見通しも立てやすくなりますが、労使協定の締結が必要です。
どの方法を採用するにせよ、就業規則や社内ルールで明確に定めておくことがトラブル防止の基本です。

徳島市のとくほ社会保険労務士事務所
壁③ シフト確定後の有休申請への対応が大変
多くの小規模事業所では、必要最低限の人員でシフトを組んでいます。シフトが確定した後に有休を申請されると、代替要員の確保が難しく、オーナー自らが入らざるを得ないといった状況になることもあります。
【対応のヒント】
翌月のシフトを組む前の段階で、出勤不可日だけでなく「有休取得希望日」もあわせてヒアリングする流れを取り入れましょう。シフト希望票に「有休希望」欄を設けるだけで、計画的な有休取得が促され、直前の欠員補充のストレスを大きく減らすことができます。
まとめ:ルールを決めておくことが、双方の安心につながります
シフト制における有給管理のポイントは3つです。
・付与日数は実績をもとに算出する
・有休取得日の給与計算方法を就業規則で明確にしておく
・シフト作成時に有休希望を一緒に確認する仕組みをつくる
仕組みが整っていれば、スタッフは安心して休め、事業主側の管理負担も軽くなります。
「とりあえず何となく運用する」から一歩踏み出すことが、トラブル予防の第一歩です。
シフト制の有給管理についてご不明な点やご相談は、お気軽にお問い合わせください。
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