
職場で「パワーハラスメントを受けた」という相談を受けたとき、担当者はどのように動けばよいのでしょうか。感情的な訴えに動揺してしまったり、逆に「よくある話」と軽く扱ってしまったりすると、事実の把握を誤り、対応そのものが二次被害につながりかねません。
この記事では、実際に社労士として相談を受けたときの複数の事例を基に、社内で相談を受けてから調査、判断に至るまでの流れを解説します。
(プライバシー保護のため、具体的な業種や人間関係については記載していません。一般論としてお伝えします)
※ ハラスメントの法的な定義などについてはこちらの記事をご覧ください
参考 厚生労働省 事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針
相談受付の手順
ハラスメント相談窓口として外部機関を設置するなら顧問契約を結んでいない弁護士など、利害関係のない第三者が望ましいとされています。
体制上どうしても社内の担当者が対応せざるを得ないケースもありますので、この記事では、社内で調査・対応を行うことを前提に解説します。
まず、調査を行う「調査担当者」を決める必要がありますが、1名だと客観性が保たれないことや担当者本人の心理的な負担を考えて、複数名設置するのが望ましいと考えます。
ヒアリング
事実確認のためのヒアリングには、次の3者が関わります。
・相談者
・第三者(関係者)
・行為者(パワハラ行為をしたとされる相手)
このとき、聴く順番を少し工夫するようにしています。
相談者→第三者→行為者の順に進めることを推奨します。
行為者は職場において相談者より立場が上であることが多く、先に行為者から話を聞いてしまうと、その後で話を聞く第三者が、行為者に配慮して証言をためらったり、内容を合わせてしまったりする可能性があります。
また、調査する側にも「行為者の説明」が先に入ることで、無意識のうちに思い込みが生じ、その後のヒアリングや事実認定に影響してしまう恐れがあります。
ヒアリング前に確認しておくこと
具体的な聞き取りに入る前に、次のような基礎情報を担当者側で把握しておくと後の整理に役立ちます。
・基礎事項の確認(相談者・行為者の所属、役職、勤続年数など)
・被害者と行為者の関係性(業務上の指揮命令関係、日常的な接点の有無など)
・会社全体の人間関係
・部署の名簿
たとえば「人前で大声で罵倒された」という相談であれば、そのフロアの広さや在席人数、当該業務の内容、標準的な処理速度、就業規則上の指導基準なども併せて確認しておくと、行為が「指導の範囲」なのか「行き過ぎた叱責」なのかを判断する材料になります。

徳島市のとくほ社会保険労務士事務所の労務相談
調査の内容
事前準備が整ったら、実際のヒアリングに入ります。
相談者へのヒアリング
相談者には、ハラスメントだと感じた行為者の言動を、できる限り具体的に話してもらいます。5W1H(いつ・どこで・誰が・誰に・何を・どのように)を意識し、聞き取ります。あわせて、関係者のうち誰に話を聞いてほしいかも確認しておきます。
関係者(第三者)へのヒアリング
関係者へのヒアリングは、相談者が希望した人物を優先するのが望ましいです。ヒアリングを行うこと自体、口外禁止を徹底してもらう必要があります。
聞く内容は、対象となる行為を直接見聞きしたかどうか、見聞きした場合はその内容を5W1Hで具体的に聞くことです。
また、相談者と行為者それぞれの普段の勤務態度や人柄についても聞いておくと、参考になります。「些細なことでも構わない」と伝え、相手が話しやすい雰囲気の質問から始めることも大切です。
行為者へのヒアリング
行為者には、対象となる行為が事実かどうか、そしてその行為に至った経緯を確認します。あわせて、行為者側から見た相談者の問題行動があれば、それも聞き取ります。
このとき注意したいのは、無理に事実を認めさせようとしないことです。
詰問のような形になると、行為者が事実を話さなくなったり、後の手続きで「強要された」と主張されたりするリスクがあります。
あくまで事実確認の場であることを意識しましょう。
被害者・第三者・行為者、それぞれの立場や信念は異なります。
ヒアリングでは、相手の考えを頭ごなしに否定せず、その人なりの受け止め方に一定の理解を示しながらも、話の中身は5W1Hで具体的に掘り下げていくという姿勢が求められます。
「事実」と「感情」を切り分けて聞き取ることを意識すると、後の整理がしやすくなります。
こうしてヒアリングによって集まった証言は、まだ、情報としてはバラバラな状態です。
次回の記事では、これらの証言をどのように時系列で整理し、処分の判断につなげていくかを解説します。
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