
「採用面接のときに過去のメンタル疾患など病歴について質問してもよいのか」というご質問をよくいただきます。
4年前にも記事にしていますが、2026年の今、感じることを書いてみたいと思います。
結論から言うと「法律上絶対にダメ」とされているわけではありません。しかし、プライバシー保護や障害者差別禁止の観点から、質問の仕方や扱い方には慎重な配慮が必要です。
採用面接での健康状態の質問は可能か
前提として、企業には自社の業務に適した人員を採用するための「採用の自由」があります。そのため、入社後に業務を適切に遂行できるか、あるいは就業上の配慮が必要かを確認する目的であれば、健康状態について質問すること自体は可能です。
ただし、プライバシーに関わる精神疾患や病歴を質問する際には、以下の注意点を抑えておく必要があります。
業務上の必要性を明確にする
「どのような業務を行ううえで確認が必要なのか」という目的を明確にしておく必要があります。
質問の仕方を工夫する
「過去にうつ病にかかったことはありますか」とストレートに尋ねるだけでは、業務上の必要性との関係性が分かりにくいです。
「これまでの職歴における空白期間の過ごし方」や「人間関係での課題にどう対処してきたか」といった具体例を聞くことで、自社の業務への影響や適性を確認するのがコツです。
要配慮個人情報として厳重に管理する
病歴や健康状態に関する情報は「要配慮個人情報」に該当します。取得した情報は採用選考の目的以外には使用せず、漏洩しないよう厳重に管理しなければなりません。
虚偽申告があった場合の対応
「面接時に病歴を隠していたことが入社後に発覚した場合、解雇は可能か」というご質問もよく受けます。
労働契約法16条より、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。
実際の解雇の可否は、以下の要素によって判断されます。
- 業務に重大な支障が出ているか:病気の影響で契約通りの勤務が継続できない状態にあるか。
- 信頼関係の維持が困難か:意図的な虚偽の申告があり、雇用の継続が難しいほど信頼関係が破壊されたと言えるか。
東京地裁R5.7.28の裁判では
・「2年程度のSE勤務歴と開発経験がある人」を採用したかった病院が
・「3年くらいSEとして勤務し直近4か月開発経験がある」という経験者を採用
・しかし採用後、「開発経験がある」としていた4か月間、精神疾患で休職していたことが発覚
・会社は試用期間満了を待たずに解雇
・裁判所の判断は、解雇有効
という例がありました。
ったこの判決では、採用の決め手になった「開発経験」が、休職期間により否定された以上、想定していた能力を有しないと判断できるとして、能力不足を理由とする解雇が有効とされました。「会社が何を根拠に採用したのか」がポイントになりました。

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応募者と企業、それぞれの心理
応募者側の心理として「過去の病歴を正直に話せば不採用になるかもしれない」という不安があれば、隠したいという気持ちは、第三者として分からなくはないです。
これは企業側にも同じことが言えて、労働環境の厳しさや不十分な体制など、「応募者に伝えると辞退されるかもしれない情報」を、すべて正直に言えているでしょうか。「聞かれなかったから答えなかった。あとで言おうと思っていた」みたいなことはあるのではないかと思います。
本当は、会社も応募者もネガティブな情報も含めて正直に伝えることが理想です。綺麗ごとかもしれませんが、正直に話した結果、不採用や事態になったとしても、それは縁です。結局隠した状態で入社しても発覚したら印象が悪くなります。ですが、面接ではどうしても取り繕ってしまい、お互いに本音を開示できないことも、よくあることです。
過去の病歴を聞くことに意味はあるのか?
そもそも、採用面接で過去の病歴を詳しく確認することに、どのくらい意味があるでしょうか。
メンタル疾患の発症には、個人の特性だけでなく、働く環境や人間関係が大きく影響します。
過去に一度もメンタル疾患にかかったことがない人でも、職場の環境や相性が合わなければ短期間に適応障害などを発症する可能性があります。
逆に、過去にメンタル疾患の経験がある人でも、職場環境や仕事の進め方が合っていれば、症状が出ずに安定して勤務できるかもしれません。むしろ過去の経験から、体調管理への対処に慣れていて、長い目で見ると安定して仕事をしてくれるかもしれません。
過去の病歴は、あくまで過去なので「あなたの会社に入ったあと」の仕事ぶりをすべて判断できるわけではありません。
まとめ
面接時などに「参考として」病歴を確認すること自体は否定しません。でも、それよりも「自社の職場環境やチームと相性が良いか」「お互いの不完全な点も理解して一緒に働いていけそうか」を確認することが大事なのではないかと、最近は考えています。
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