
労働者を採用する際に、3か月や6か月の「試用期間」を設ける会社さんも多いことと思います。
試用期間は「本採用前に適格性を判断するための期間」ですが、会社が自由に従業員を辞めさせられる期間ではありません。「客観的で合理的な理由」がない本採用拒否は、法律上「無効」と判断されます。
今日の記事では、試用期間後の本採用に悩む経営者の方々に向けて、確認・整理しておいたほうがいい内容について解説します。
本採用拒否が認められるための「合理的な理由」とは
試用期間満了後の解雇(本採用拒否)が有効となるには、通常の解雇と同じように「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要です。(労働契約法16条)
具体的には、以下のような項目が判断のポイントとなります。
勤務態度(出勤率・遅刻・早退)
最も客観的な指標です。「出勤率90%〜98%以上」といった数値を基準として定めている会社もあります。正当な理由のない欠勤や、度重なる遅刻・早退は、適格性不足を示す明確な証拠となります。
業務能力の不足
「期待外れだった」という主観的な評価ではなく、第三者が見ても納得できる基準が必要です。
・数値化できるもの: 営業の成約数、特定の資格取得、技術テストのスコアなど。
・職種ごとの標準スキル: 例えばアプリ開発職であれば「簡易的な計算アプリを自力で構築できる」といった、その職務において一般的とされる水準を設定することが望ましいです。
経歴の詐称や虚偽の申告
職歴の詐称や、業務に重大な支障をきたす事実を隠していた場合、労働者との信頼関係が維持できないと判断され、本採用拒否の正当な理由になり得ます。
対象者の属性による判断基準の違い
採用時の条件や雇用形態によって、本採用拒否の認められやすさは変動します。
新卒採用の場合: 「できなくて当たり前」という前提があるため、能力不足を理由とした拒否のハードルは非常に高くなります。
管理職・店長候補: 一般職員よりも高い待遇や特定のスキルを前提に採用されているのであれば、期待された役割を果たせない場合の能力不足は認められやすくなる傾向にあります。
逆に、管理職とは名ばかりで、最低賃金ギリギリの賃金だったとすると「その賃金で名前だけ高度なスキルを求めることは合理的ではない」と判断される場合もあります。

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メンタル疾患など試用期間中に体調不良を発症した際の注意
試用期間中にメンタル疾患等で休職が必要になった場合、会社には慎重な対応が求められます。ハラスメントの有無や、業務過多による労災の可能性がないかを確認してください。
業務によるけがや病気の治療のために休業している従業員については、休業中とその後30日間は、解雇が原則として禁止されれています(労働基準法第19条1項)
調査の結果、ハラスメントの事実はない場合でも、調査記録も残しておきます。万が一紛争になったときのために、本人の既往症や過去の職歴も、分かる範囲で一緒にまとめておきましょう。
会社側が問われる「評価の手順」と「教育実績」
裁判等で争点になりやすいのは、能力の有無そのものよりも「会社側が適切に対応したか」という点です。
採用基準の共有とミスマッチの防止
(1)入社時に、本採用の基準を労働者と明確に共有できていたか。
(2)面接官が、現場で必要な技術水準を正しく理解して選考を行っていたか。
(3)指導・改善機会の付与
(4)具体的な指導内容を記録として残しているか。
(5)過去にも同様の理由で試用期間中に退職する人が続いていないか
「人事や役員が現場のことがわからずに採用し、後から水準に達しないと言う」のは、会社側の組織連携の過失とみなされる可能性があります。
また、労働者に問題行動(指示に従わない、迷惑行為など)がある場合でも、即座に拒否するのではなく、「改善の機会を与えたか」が重要です。
さらに、会社内で、離職者を繰り返しているのであれば、紛争になった場合に、労働者の問題ではなく会社側の教育体制や組織づくりに問題があるのではないかと評価されます。
まとめ:記録と説明が円満な解決を導く
わたしの主観かもしれませんが、近年、本採用拒否が有効とされる判例が多く見られるようになっています。それは会社側が「なんとなく採用してなんとなく試用期間満了で退職させる」みたいな運用を改め、期待水準の明確化や指導記録の作成に取り組んでいるケースが増えているためと考えられます。
紛争の際の解雇の有効性は、上に書いたような基準をもとに総合的に判断されます。
こうしておけば絶対大丈夫、ということはないのですが、
・本採用が難しい理由を本人に対して誠実に説明し
・その根拠となる客観的な記録を提示できるかどうか
が重要です。
労働者も一人の人間として、雑に扱われたときと、きちんと説明を受けたときでは、会社に対する反応が違ってきます。適切な手続きと記録を残すことが、結果としてトラブルから組織を遠ざけることにつながるのです。
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