
メンタルヘルス研修の講師をしていたとき、管理職の方からある質問を受けました。
その場では十分にお答えできなかったこの問いについて、改めて考えをまとめました。
休職期間満了による退職において、就業規則の整備以上に大切なポイントがあります。
「安全」とは何を意味するのか
まず、「安全に退職してもらう」とはどういう状況か?を考える必要があります。
解雇無効で訴えられないことでしょうか。トラブルなく円満に退職手続きを進められることでしょうか。
このご質問に対する答えは、実は「就業規則の文言がどれほど完璧か?」ということよりも、もっと本質的なところにあります。
それは「労働者の気持ち」です。
本人が納得して休職期間満了により退職するのであれば、大きな問題は起こりません。自然退職、自己都合退職に近い扱いになります。
しかし、本人が退職したくないのに会社から退職を迫られたと感じれば、当然トラブルになります。

従業員は退職を望んでおらず、会社としては辞めてほしい状態が、一番トラブルになりやすい
認識のズレが生むトラブル
例えば、労働者本人が「もう治った。職場復帰が可能だ」と考えている場合を考えてみます。
しかし人事や管理職、産業医から見ると、到底職場復帰できる状態ではない、ということも多いものです。
「戻れるつもり」の本人にとっては「私傷病による休職期間満了」という説明は納得できるものではありません。
このような場合、休職期間満了を理由とした解雇という形になりますが、労働者が解雇無効を訴えた際に、就業規則や休職手続きの小さな瑕疵から「解雇が無効」と判断される可能性はゼロではありません。
休職期間満了に限らず、労働者の意に沿わない労働契約の解除に大切なのは「労働者の納得」と「手続きの適正さ」です。
具体的な対応の進め方
では、どのように対応すればよいのでしょうか。
「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」には、以下のように記されています。
1. 主治医との連携
人事や産業医の「意見書」「主治医の診断書・回答書」を発行してもらうなどやり取りを行う2. 復職可否判断の明確化
「通勤できる生活習慣、業務遂行に耐えられるとはどういう状態か?」明確化3. 試し出勤
職場も本人も「職場復帰のための判断」であることを意識する。漫然と遅刻・欠勤が続くようであれば職場復帰は難しいと考える
職場としては「優しい配慮」と同時に「冷静な目」を持つことが大切です。
以上のプロセスを踏んだ上で「やはり復帰は難しい」となれば、本人に丁寧に説明し、休職期間満了による退職手続きを進めます。
労働者本人が最終的に納得しなかったとしても、会社が適切なプロセスを踏んでいれば、万が一解雇無効の裁判になった場合にも、会社のリスクを減らすことができます。
誤解のないようにお伝えしておきたいのですが、労働者の気持ちを軽視しているわけではありません。
ただ現実として「認知の歪みにより自分の状態を客観的に見ることができない労働者」は少なくありません。
それ自体がメンタル疾患の症状である可能性もあります。
会社ができること、できないこと
メンタル疾患の症状に対する治療や判断は医療の領域で、会社が解決することはできません。
会社ができることは以下の通りです。
・事実確認の徹底
・適切な手続きの実施
休職期間満了による退職を円滑に進めるために最も大切なのは、就業規則の文言の完璧さではありません。
労働者の声に耳を傾けて認識を合わせること、認識の相違があるのであれば、会社としてできる限りの対応を行うこと。
そして、記録を残すことです。
そうすることで、たとえ労働者本人の納得が得られなくても、法的なリスクを最小限に抑えることができます。
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