人事労務の業務に携わって17年ほどになります。
その間に、色々と失敗をしてきました。
一度でこりて同じ失敗をしなくなったものもあれば、残念ながら繰り返してしまったものもあります。
単に知らなかった、知っていたけど忘れていた、知っていたしそれまで出来ていたけどミスしてしまったなど、原因は様々です。
人事労務初心者の方、まだ経験の浅い方向けに、自分の失敗談を記録したいと思います。
仲の良いご夫婦だと思っていたけれど…
企業の人事担当として働いていた頃の話です。
その会社には、いわゆる「社内結婚」のご夫婦が一定数働いていました。
ある日、山田さんご夫婦の妻 花子さん(仮名)が産休に入ることになりました。
花子さんは妊娠のお知らせを頂いた直後から体調を崩してしまい、診断書を提出して傷病休職を取得されていました。
産前休暇の時期になっても体調が回復しなかったため、傷病休暇から中断なく産前休職に入りました。
お休みの間、給与明細や給付金の書類など、会社とご本人の間で書類のやり取りが生じます。
通常は郵送で書類をやりとりしますが、夫が社内にいるのであれば、社内便でやり取りをしたほうが郵送料の節約になるため「ご夫婦の片方宛の書類は社内便で配偶者に送る」というのがその会社の風習でした。
山田さんご夫婦は4人めのお子さんなので、ご夫婦とも手続きには慣れているだろう、と特に心配せず夫の山田太郎さん(仮名)宛に書類を送りました。
こんな失敗をしました
数日後、人事部に花子さんの携帯電話から電話が入りました。
「産休についての書類を今から言う住所に送ってほしい。このことは夫に伝えないでほしい」
「?」
事情はよくわかりませんが、ご夫婦は別居しており、花子さんは太郎さんに居所を知らせたくないのだそうです。
妊娠中で体調を崩されているのにご自宅じゃないところにいて大丈夫?
そもそも電話口で話しているのは花子さんだと確信を持てるだろうか。
無自覚に「配偶者の片方宛の書類はもう片方に送ればいい」と思いこんでいたのは間違いだった。
電話を受けながら色々な思いが交錯しました。
こうして後始末をしました
かかってきた電話番号は、会社に登録してある社員データの通りです。
お姉さんのところにしばらく身を寄せているので、自宅とも実家とも違う住所なのだそうです。
お声の様子や話す内容からも、電話の相手が花子さんで間違いないと判断し、産休についての書類はすぐに所定の住所へ送りました。
翌年、産後休暇と育児休業を終えて戻られたとき、太郎さんと花子さん揃って人事に挨拶に見えました。
復帰後の時短勤務の手続きのみで、お互いに余計なことは話しませんでしたが、お子さんともどもご家族一緒に暮らしているようです。
今回は当てはまりませんでしたが、虐待やDV被害など、家庭内のことでも重大な刑事事件に発展するケースもあります。
企業の人事部や外部の社会保険労務士は、業務の範囲内でも、各ご家庭の事情に触れてしまう場面があります。
余計な勘ぐりをしてはいけませんが「解決できない問題を抱えているのでは?」と思われる従業員やご家族に、どこまで踏み込んで良いものか、悩むことは時々ありますね。恐らく正解はないのでしょうけれども。
少し話がそれました。
今回の失敗の原因はこれ
「以前も、花子さんの書類を太郎さんに送っていたから」
「他の社内結婚の社員もそうしているから」
「夫婦は基本的に一緒に暮らしているに決まっているから」
といった思い込みで、産休の書類の送り先をきちんと確認していませんでした。
体調不良でお休みしたまま産休に入られたので、直接ご本人とやりとりする機会がなかったのも原因です。
「体調不良のところに、わざわざ電話するのもなあ」
「前回までご主人に送ってよかったしな」
と思わず、ご本人の意思を確認できたらよかったのかなと思います。
夫婦であっても、個別の人間ですし、数年前とは状況が変わっていることもありますから。
こんなことにも気をつけて
今回は書類—特に個人情報を含まないもの—のやり取りだったので、花子さんからの連絡で再送ができました。
全く別のケースで「夫婦の状況は変わる可能性がある」と思い知らされた経験もあります。
従業員の夫が入院し、協会けんぽを通じて傷病手当金の支給手続きを行ったときのことです。
→被扶養者の妻が「傷病手当金代理受け取り欄」に妻個人の口座を記入
→夫が退院し、妻が手当金を受け取った直後に離婚
→妻が代理人として受け取ることは夫には無断だったらしく、夫婦で揉める
ということがありました。
この出来事は十数年前で、傷病手当金手続きに慣れていない私は「事業主欄」を正しく書くのに気を取られていました。
「妻が代理人になっていること自体に気づかなかった」自分の至らなさを反省しました。
ただ、気づいたとしても「それを夫に確認するべきだったのか…?」と今でも時々思い出します。
書類自体の不備がないのに「奥様が代理になっているけど大丈夫ですか?」って…、ちょっと聞き方を悩むとは思います。
何はともあれ、夫婦であっても一心同体ではないし、いつまでも仲がいいとは限らない。
ということだけは肝に銘じておきたいと思っています。
とくほ社会保険労務士事務所では、
①社会保険手続き
②メンタルヘルス対策・労務相談・就業規則など
に加えて
③月々の雑多な事務の代行(オンライン)
書類作成、会計処理、入力、リサーチ業務など
を請け負っております。
お問合せはこちら
よりよい会社になるために、お手伝いできることがありましたらご連絡ください。
初回相談は1時間無料。対面でもZoomなどオンラインでも承ります。