
寒さが本格的になり、年末年始の足音が聞こえてくる季節になりました。
この時期、多くの職場で話題に上がるのが「賞与(ボーナス)」や「年末年始の手当」です。
そこで改めて注目したいのが「同一労働同一賃金」というルールです。
同一労働・同一賃金について厚生労働省の特設ページは→こちら
「正社員とパートで手当に差があるのは当たり前」と思われがちですが、実はその「差」には合理的な理由が求められます。
今回は、経営者も労働者も知っておきたい、同一労働同一賃金の基本を整理しましょう。
「正社員」と「非正規社員」の違いとは?
一般的に正社員は、以下の4つの特徴を持つことが多いとされています。
・無期契約(定年まで雇用が続く)
・月給制
・フルタイム勤務
・直接雇用
一方で、パートタイム労働者や有期雇用労働者は、これらの一部が異なる「非正規雇用」に分類されます。
この両者の間の「待遇の差」をどう考えるべきかが、法律(パートタイム・有期雇用労働法)で定められています。
知っておきたい2つの重要なキーワード
法律には、大きく分けて2つの考え方があります。
① 均衡(きんこう)待遇(第8条)
「不合理な待遇差」を禁止するものです。 例えば、パート社員の仕事の貢献度が正社員の6割程度であれば、待遇をゼロにするのではなく、その割合に応じたバランスの良い待遇(例えば正社員の6割程度など)にする必要がある、という考え方です。性質や目的に照らして、極端な差は「不合理」と判断されます。
② 均等(きんとう)待遇(第9条)
仕事の内容や責任の範囲、転勤の有無などが正社員と全く同じ(同視すべき)である場合、すべての待遇について差別的な取り扱いを禁止するものです。
「差」があっても良いが「説明」が必要
「すべての賃金を一律にしなければならない」というわけではありません。
正社員であれば仕事の責任の範囲や、将来の幹部候補としての期待値、非正規は雇用の調整弁としての役割など、役割や仕事が違う場合は、差をつけることは可能です。
重要なのは、「なぜその差があるのか?」を従業員に納得感を持って説明できるかという点です。 弁護士の研修で教わったのですが、いきなり裁判を起こすケースはそうそうなく、説明を求められた際に会社側がきちんと誠実に回答ができないと、揉めてしまいがちなのだそうです。
手当ごとの「判断の分かれ目」
判例や通達から、待遇ごとの方向性をまとめました。
| 手当の種類 | 判断の傾向 |
| 通勤・食事・危険作業手当 食堂利用などの福利厚生 | 同じ条件であれば、正社員・非正規問わず同じ待遇が必要とされることが多いです。 |
| 賞与(ボーナス)・退職金 | 仕事の内容や支給条件によります。必ずしも同じにする必要はありませんが、全く出さない場合は理由が問われます。 |
| 住宅手当 | 「転勤の有無」が判断の分かれ目になることが多いです。 正社員にも非正規社員にも転勤はないのに、正社員だけに住宅手当がでていると根拠を問われます。 |
| 家族・扶養手当 | 議論が分かれる分野です。最近では家族の多様化を受け、手当を廃止して基本給へ還元する企業も増えています。 |
冬に関連する興味深い判例
寒冷地手当(日本郵便札幌事件): 正社員にだけ寒冷地手当が支給されることに対して、非正規社員が不合理だと訴えました。会社側は「正社員は将来の転勤を見越した賃金体系で基本給に寒冷地手当は含まれていない。一方、非正規社員は採用時の基本給にその分が含まれている」と主張。結果として「差別的ではない」と判断されました。
年末年始手当(日本郵便大阪事件): 年末年始に非正規社員も同様に出勤していた実態が重視され、こちらは「差別的取り扱い(不合理)」と判断されました。
※ いずれの裁判でも、手当の趣旨や通常の給与の内訳など、詳細な検討が行われています。この判決がそのまま他のケースに当てはまるわけではないことをご注意下さい。
まとめ
同一労働同一賃金の判断は、その会社の就業規則や長年の慣習を確認しない限り、一概に「これが正解」とは言えません。
まずは自社の待遇差が、仕事の内容や責任に見合った「説明可能なもの」になっているかを見直してみることが大切です。
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