
労働相談で、経営者や管理職が口にしがちな言葉があります。
「常識的に考えればわかりますよね?」
しかし、この認識が労働トラブルのきっかけになることが少なくありません。
世代、役職、そして立場が変われば、「常識」はまるで異なります。
特に、給与や人事評価といったデリケートな問題では、「なんとなく」や「言わなくてもわかるだろう」という認識のズレが、会社の信用を揺るがす大きな問題へと発展します。
この記事では、具体的な事例を紹介し、
・「なんとなく」で済ませているルールの危険性
・「紙の客観性」の大切さ
を解説します。
事例1:営業手当の定義をめぐる認識のズレ
【会社の認識】 労働条件の明治は口頭のみ。社長は「営業手当」について「大規模なイベント時の販促活動で直接売れた場合」に支払うものだと考えていました。
【従業員の認識】 従業員は「営業手当」について、日々の顧客との個人的な付き合いや、それに伴う間接的な売上も含めて、結果的に売れたら支払われるものだと考えていました。
結果、従業員が期待していた手当が支払われず「入社時に約束したのに不当だ」と不満が噴出します。
対策:労働条件は適切に書面やメールで明示し、手当等の支給要件は賃金規定などを作成しましょう
まず、労働基準法第15条で
「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」
と規定されています。
特に「営業手当」のような会社独自の手当は、
・支給の条件
・金額(上限があるのか定額なのか、売上の◯%なのか)
・例外事由
などを、就業規則、賃金規定などで詳しく定めておかないと、後々のトラブルに繋がります。
口頭でも契約は成立しますが、その場限りの会話ではお互い都合のいいように解釈したり、記憶が薄れていったりしがちです。
労働基準監督署や労働局に訴えられた際「口頭で説明した」だけでは、会社側の不利に働くリスクがあります。
事例2:育児短時間勤務中の評価
【従業員の認識】 育児短時間勤務(時短)をしている本人は、限られた時間の中で最大限の努力をしているつもりで、「頑張っている」という自負がありました。
【人事担当の認識】 しかし実際は、フルタイムの従業員が担当するはずだった不在時の問い合わせ対応や、急な休みの日の会議出席など、カバーしきれない業務が発生しており、フルタイムと同じ仕事量をこなしているとは到底言えない状況でした。
賞与などの評価が低く付けられた本人は、「時短勤務という立場を理由に不当に評価を下げられた」と主張します。
人事担当は「常識的に考えればフルタイムの人よりも評価が下がるのはわかりますよね?」
と諭しますが、納得できないようです。
対策:評価の基準はわかりやすく可視化し、本人への理解を求めましょう。
時短勤務者の評価で重要なのは、評価基準の客観性です。
評価基準が「時間=量」に強く依存しているならば、短時間勤務の人をフルタイムと同じ評価にできない可能性はあり得ます。
一方で、評価基準が「クオリティ」や「成果(例:一件あたりの売上の大きさ)」など、時間とはイコールではない要素に重きを置いているならば、短時間勤務でもフルタイムと同等か、上回る評価を得られる可能性もあります。
人事担当や上司がすべきことは「うちの会社はこういう基準で評価しています」ということを、目に見える形の評価基準や等級制度として示すことです。
基準が明示されていれば、従業員は低評価でも「この項目が足りなかったからだ」と納得しやすくなります。

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結論:客観的な「書類」が大切です
「なんとなくは伝わる」「常識でわかる」という考え方は、伝わってない場合が多いです。
紙(書面)で客観的に示すことは、例え従業員が納得してくれなかったとしても、会社を守る防御策となります。
例えば、
本人が
「手当がもらえないのは不当だ」
「育児短時間期間中だから不当に評価を下げられた」
と労働基準監督署や労働局に訴え出たとしても
会社は
「事前に就業規則や賃金規定で明示した」
「公平な基準によって判断した」
と、客観的な証拠をもって主張することができます。
労働条件などを明示するときの様式は、厚生労働省のページが法的には揃っているのですが、探すのが難しかったり、分かりにくかったりするのが難点です・・・。
過不足がないか、当所はじめ社会保険労務士や、地域の働き方改革推進支援センターにご相談ください。
あなたの会社の「常識」は、ちゃんと紙に書かれていますか?
就業規則と賃金規定を確認し、曖昧な部分がないか確認しましょう。
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