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Y銀行事件(大阪高裁・平成13年)は、その「建前と実態のズレ」が問題となった事例です。
朝礼前の準備作業や打ち合わせは「自主的」とされていましたが、実際には多くの行員が当然のように参加しており、裁判所はそれを労働時間と認定しました。
「労働時間」とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間を指します。
口頭や文書で「業務命令があったか」ももちろん重要ですが、例えはっきりした指示がなかったとしても「使用者の黙示の指示」があったか」「実際に労働者が拘束され、指揮命令下にあったか」が問われます。
■ 「労働時間」を争ったY銀行事件
● Y銀行の就業規則
| 始業 | 8:35 | |
| 終業 | 17:00 | 週初と月末は17:35 | 
| 休憩時間 | 午前11時から午後2時の間に1時間 | 交替制、外出先届出承認が必要 | 
● 実際の勤務実態(就業規則との乖離)
| 始業前 | ・男子行員のほとんどが朝8時ごろに出勤し、開店準備などに従事 ・週2回、開店準備後に朝礼が実施 ・男子行員は「融得会議」に事実上参加が義務付けられていた | 
| 終業後 | ・午後7時以降も多数の行員が業務に従事することが状態化 | 
| 休憩時間 | ・取れないことも多かった | 
■ 労働者Xの主な請求内容
時間外勤務手当の未払分
対象業務:
〔1〕始業時刻前の準備作業
〔2〕朝礼
〔3〕融得会議
〔4〕昼の休憩時間
〔5〕終業後の残業等

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■ 判決
● 時間外勤務(労働時間)と認められたもの
| 始業前 | 午前8時15分から始業時刻までの間の勤務(準備作業、朝礼を含む) | 
| 始業前会議 | 融得会議など、8時15分以前に開催された場合の開始時間以降の勤務 | 
| 終業後 | 終業時刻後、少なくとも午後7時までの間の勤務 | 
理由: これらは、銀行の「黙示の指示による労働時間」と評価できるため
● 労働時間と認められなかったもの
昼の休憩時間(〔4〕)
■ まとめ
Y銀行事件では、開店・閉店準備、朝礼、研修について
・参加しないと人事評価や周囲の目に影響する
・実際にほとんどの職員が参加していた
という実態が重視され「自由意思による参加」とは言えない、と判断されました。
使用者の中には「労働時間か、そうではないか」曖昧な時間について「任意だから大丈夫」「善意で協力してもらっているだけ」と考える方もいます。
労働者からしたら、上司や先輩が言う「自由参加」「断ってもいい」をそのまま鵜呑みにできるわけもなく「建前は自由参加でも、強制だと思った」というのは、客観的に見ても納得しやすい主張です。
「労働時間か、そうではないか」曖昧にして放置するのは、使用者として大変危険です。
リスクを減らすためには、
・労働時間かどうか?の判断を曖昧なままにしない→業務の棚卸しを行う
・「慣習だから行っている」集合、「なんとなく」の時間外作業の、必要性を検証する
・必要な作業はきちんと「業務」として扱い、割増賃金を支払う
前回の「なんとなくは伝わらない」と同様、解釈の幅が生まれそうな曖昧な状態は極力なくすことが大切です。
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