

残業代を支払わない、労働時間を管理していない、適法な手続きを取っていないなど、労働基準法違反の状態で社員に残業をさせている会社は少なくありません。
本記事では、
「残業させているけど何もしていない・・・」
という事業主の方に向けて、労働基準法で定められている残業のルールと、違反を放置した場合のリスクを解説します。
残業を正しく理解する
まず、法律上の「残業」について理解を深めましょう。
残業代を正しく計算するためには、以下の2つの時間外労働と、休日労働、深夜労働の概念を知る必要があります。
・法定労働時間外労働: 労働基準法で定められた1日8時間、1週40時間(特例事業所は44時間)を超えて働くこと
・休日労働: 週に1日以上与えることとされている「法定休日」に働くこと
・深夜労働: 午後10時から午前5時までの間に働くこと
これらの労働には、以下のように法律で定められた割増賃金を支払う義務があります。
・月60時間を超える法定時間外労働: 50%以上の割増
・休日労働: 35%以上の割増
・深夜労働: 25%以上の割増
段階別の注意喚起と法律解説
御社の状況に合わせて、以下のステップでチェックしてみましょう。
レベル1:割増賃金を支払っていない
「割増賃金を支払っていません」
これは最も基本的な法律違反です。法定労働時間や法定休日、深夜に労働させた場合、会社は必ず割増賃金を支払わなければなりません。
これを怠ると、労働基準法第37条違反となり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、未払い残業代は過去2年間(当面の間は3年間、将来的には5年間)までさかのぼって請求される可能性があり、莫大な支払いを命じられるリスクがあります。
レベル2:フレックスタイム制なので、割増賃金はすべて払わなくていいと思っている
「フレックスタイム制なので、深夜の割増はいらないですよね?」
フレックスタイム制であっても、深夜労働の割増賃金(25%以上)は発生します。
フレックスタイム制はあくまで労働時間の清算に関する制度であり、深夜に労働させた場合の割増賃金支払いの義務は免除されません。
レベル3:36協定を締結していない、または管理をしていない
「36協定を出していません」
「36協定は一応1枚だけ出してます。月何時間残業させているか管理してません。45時間超えてる月もあると思います」
労働者に法定労働時間を超えて残業させる場合、会社は労働者代表や労働組合と「時間外・休日労働に関する協定届(36協定)」を締結し、労働基準監督署に届け出る義務があります。
これを怠って残業をさせると、労働基準法第32条違反となり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、36協定を締結していても、残業時間の上限は原則として月45時間、年360時間です。
この上限を超えて残業をさせている場合、36協定違反となり、罰則の対象となる可能性があります。
会社には、労働時間を正確に把握し、上限を超えないように管理する責任があります。
レベル4:特別条項付きの36協定を誤解している
「特別条項の36協定出してます。月60時間超えても割増率は変わりません」
「特別条項の36協定出してます。月100時間超えて残業させる月もあります」
「特別条項付き36協定」は、臨時的な事情がある場合に限り、年6回まで、月45時間を超える残業を可能にする制度です。
しかし、これには以下のような厳格なルールがあります。
・時間外労働+休⽇労働 複数月(2~6ヶ月)平均して80時間以内
・時間外労働 年720時間以内
これらを守らずに労働をさせた場合、労働基準法違反となります。
また、月60時間を超える法定時間外労働については、特別条項の有無にかかわらず、50%以上の割増賃金を支払わなければなりません。

徳島県徳島市のとくほ社会保険労務士事務所の給与計算
今すぐできること
御社の状況はいかがでしたか?
もし一つでも当てはまる項目があった場合、今すぐ以下の対応を検討してください。
労働時間の正確な把握: タイムカードや勤怠管理システムなどを利用し、従業員の労働時間を1分単位で正確に記録しましょう。
正しい賃金計算と支払い: 未払いの残業代がないか確認し、速やかに支払いましょう。
36協定の見直し: 36協定が正しく締結され、労働基準監督署に届け出られているか確認し、実態に合わせて見直しましょう。
労働基準法を遵守することは、従業員を守るだけでなく、会社自身の信用を守ることにもつながります。
最後に:法律違反はいつか発覚します
「法律違反になることはわかりました。でも、バレることはあるのですか?」
労働基準法違反は
・労働者や周囲からの申告・通報
・労働基準監督署の調査
・労災事故の発生時の調査、報告
などで発覚します。
滅多にバレないのでは?と思われるかもしれませんが、今は誰でも簡単に法律を調べることができます。
労働者本人ではなくても、ご家族や知り合いから相談が来るケースも増えています。
長期間にわたる意図的で悪質な残業代未払は、事業主のみなさんが思っている以上に発覚しますし、しっかり指導を受けることになります。
不明な点がある場合は、事業所管轄の労働基準監督署や社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
「なにか指摘されるのでは?」と恐れる気持ちもわかりますが、放置していて、今より良くなることは絶対にありません。
本記事の補足、参考:労働時間・休日(厚生労働省)
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