遺族厚生年金の男女差解消に向けた動きについ徳島県徳島市のとくほ社会保険労務士事務所

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2024.7.26 遺族厚生年金の男女差解消に向けた動きについて お知らせ コラム

厚生労働省ホームページでは、遺族厚生年金の受給要件について、次のように記載されています。

子のない30歳未満の妻は、5年間のみ受給できます。また、子のない夫は、55歳以上である方に限り受給できますが、受給開始は60歳からとなります。

昨日から報道各社の記事で次のような報道がされています。

会社員などが亡くなった際に配偶者らに支給される「遺族厚生年金」について、厚生労働省は、共働き世帯が増えたことなどから受け取る要件の男女差をなくし、現役世代で子どもがいない人の受給期間は、性別にかかわらず、5年間とする方向で検討に入りました。

現状の遺族厚生年金の問題点

現状、子のない30歳以上の妻は5年を超えても遺族厚生年金を受け取れますが、子のない夫は55歳以上でないと受給権がなく、受給開始は60歳からです。
この場合の「子」とは、18歳を迎える年度末までなので、たとえ大学生の子どもがいても「子のない配偶者」となります。

つまり「子のない夫」は、55歳未満だと、たとえ収入が低くても、遺族厚生年金をもらえません。
この性差を解消するという方針は正しい方向だと思います。

それなら「子のない夫にも、子のない妻と同等の遺族厚生年金を支給すればよいのでは?」と思いますが、それは年金財源の観点から難しいのかもしれません。

それは理解したうえで、今回検討されている「一律5年間の受給期間」にするのは問題があると考えます。

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一律5年間の受給期間にすることの問題点

男女雇用機会均等法が施工されたのは1986年。
とはいえその後も、サラリーマンの妻は「旦那さんが働いているんだから仕事はやめてもいいよね」という社会的な要請で、出産、育児、介護、転勤などで仕事をやめざるを得なくなっていました。

新入社員の時点から、女性は採用の門戸が狭められたり、初任給が同じ仕事をする男性よりも少なかったりすることもありました。
また「女の子だから進学はしなくていいよね、諦めてね」という価値観が一定の地域や家庭環境では根強く残っていました。

これらの問題は、バブル崩壊、日本の景気後退、就業人口の減少に伴い、少しずつ解消されてきていますが、男女の収入格差は依然として存在します。

個人的な意見

個人的には、女性も夫の収入に頼らずに働ける社会が望ましいと考えています。
収入の壁や国民年金第3号被保険者制度を廃止すること自体は、女性の就業が男性と等しく、機会も平等に与えられたうえで進むのであれば良いことだと思います。
女性を家庭に閉じ込めるのを辞める替わりに、長時間労働や責任の重い仕事も、男性に押し付けるのではなく、適性で割り振り、健康に害を及ぼす環境は性別に関係なく解消することが理想です。

けれども、現状はそうではありません。
男女の収入格差が解消されず、家事介護の多くが女性の無償奉仕で成り立っており、一度仕事を離れると再就職の機会も乏しい現状で、遺族厚生年金だけにメスを入れるのは早計ではないでしょうか。

ではどうしたら?

現状の性差は問題であるものの、一律5年にするという急激な変更は、特に女性にとって大きな影響を与えます。
そこで、段階的な制度改革を希望します。

具体的には
・子のない夫の受給開始年齢の見直し
・一律5年ではない受給期間の延長
・女性の就業機会の強化
・再就職支援の充実
・ワークライフバランスの推進

遺族厚生年金の受給要件に男女差をなくすことは重要ですが、急激な改革は多くの人々にとって負担が大きすぎます。
段階的な制度改革と女性の就業支援を強化しながら、財源の確保と透明性の向上を図ることで、より公正で持続可能な年金制度を実現してほしいものです。

まだこれから厚生労働省の審議会で議論される話のようなので、今後の動向を見守りたいと思います。

 

今回の記事のソース

 

追記:2024.7.30

「遺族厚生年金5年有期支給」については、25年くらいかけて段階的に変えていくという経過措置が検討されていることが公表されました。

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001281516.pdf


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