診断書が会社の見解と違う場合 復職可否の判徳島県徳島市のとくほ社会保険労務士事務所

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2023.12.8 診断書が会社の見解と違う場合 復職可否の判断 お知らせ コラム メンタルヘルス

メンタル疾患を繰り返す従業員が退職したあと、企業の人事管理職の方から受けたご相談です。

会社は従業員Aさんを退職させました。
入社5年目で、1年間の休職期間満了。
会社としては「就業規則に沿った自然退職」という認識でした。

Aさんには、過去に6ヶ月と3ヶ月の休職期間ありました。
主治医からの診断書は「復職可能」となっていましたが、人事課の管理職2名が個室で本人と対談し、退職に至りました。

Aさんが基本手当(失業給付)を受ける際にいった主張

・診断書は「復職可能」なのに退職はおかしい
・退職届は個室で管理職二人に迫られたためにやむを得ず提出した

 

会社の主張
・診断書は「復職可能」としていたが、過去にも復職と休職を繰り返していて、診断書は信用できない
・退職届は本人が納得して提出した
・就業規則には自然退職の事由として「その他業務を遂行できない事情がある場合」とあるのでその部分が当てはまると思って自己都合退職にした

 

ハローワークの判断
・復職可能という診断書が出ていることと退職届提出までの本人と会社のやり取りを合わせると、自己都合退職とは言えない

 

会社の反省点
・診断書に「復職可能」の記載があったにも関わらず、会社の判断で退職届を提出させて自己都合退職にしようとした(なんとなく会社都合は外聞が悪いと思い、自己都合退職として扱った)
・「休職期間満了時に診断書と会社の見解が異なる場合」のルールが決まっておらず、Aさんへの説得により退職届を提出させた。
・産業医にも相談しなかった(理由は不明)

 

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私が関わったのは「Aさんがハローワークで自己都合ではないと主張していることに会社が戸惑っている」という段階でした。

ここまでお読みになった方は「会社の対応がお粗末すぎる」と感じるかもしれません。
この会社は、終身雇用が当たり前、転勤も異動も会社の命令に従わないなんてありえない、という割と古いタイプの社風だったので「契約とか法律とは堅苦しいことより、なんとなくの圧力や雰囲気で社員は従うはず」というスタンスで対応していたようです。

Aさんと対応した管理職に名も「休職者は会社に迷惑をかけているし、その負い目を本人も感じているはず。だからすんなりと退職してくれるのでは」という期待があったのではないかと思います。

今は労働者のほうが労働法について詳しいですし、人情ではなく法律に則って運用していくことが必要です。

 

主治医の診断書と会社で復職可否の見解が食い違う場合

原則として医師の診断書が「復職可能」となっている場合、自然退職はさせられませんし、解雇だとしても不当解雇とされる判例があります。

診断書と会社の判断が食い違うときは「産業医などに相談する」「主治医と会社側双方の見解をすり合わせるための文書を残す」など、証拠を残すことが大切です。

主治医は労働者側の情報しか聞いていないので、会社から「復職は困難」とする根拠を示した上で、主治医の意見を再度求める文書を提出してもらう、などがそれに当たります。

どうしても診断書の見解が食い違う場合は、復職出来るかできないか白黒の結論ではなく

・軽易な作業で復職させる
・その期間は有期のパート・アルバイトなど雇用形態を変える(予め就業規則に定める)
・一定期間ののち、通常業務に戻れそうなら正社員として復職させる
・軽易な作業も難しい、通常業務に戻れない場合は期間満了退職にする

という風に段階を踏み、就業規則をたてに辞めさせるのではなく、続けるにしろやめるにしろ本人が納得できる形で進めるとリスクを減らすことができます。

このケースではすでにAさんは退職後、ハローワークから会社に離職理由についての調査が入ってから、弊所へご相談をいただきましした。
就業規則や勤怠書類の確認、Aさんと会社の主張をすり合わせた結果、離職理由が自己都合から会社都合になりました。
もしAさんから「仕事ができるのに解雇された。不当解雇だ」と訴えられたら、遡って雇用が保証され賃金の支払いを命じられる可能性がありましたが、そうならずにホッとしました。

もう少し前、休職と復職を繰り返し、「もう次は退職を見据えた対応になる」という段階で当方にご相談を頂いていれば、退職の時点で双方の認識にズレが生じず、不要な調査を避けられたのではないかと感じています。

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