人事労務の業務に携わって17年ほどになります。
その間に、色々と失敗をしてきました。
一度でこりて同じ失敗をしなくなったものもあれば、残念ながら繰り返してしまったものもあります。
「単に知らなかった」「知っていたけど忘れていた」「知っていたし今まで出来ていたけどミスしてしまった」など、原因は様々です。
人事労務初心者の方、まだ経験の浅い方向けに、私自身の失敗談を記録したいと思います。
(10年近く前の失敗事例なので、届出の様式などは当時と今で変わっています。ご承知おきください)
【退職者の老齢年金が支払われない・・・ 70歳以上被用者不該当届】
会社づとめの人が入る社会保険には、健康保険、介護保険、厚生年金保険があります。
- ・健康保険は75歳まで加入(給与天引き)
・介護保険は40歳から65歳まで給与天引き
・厚生年金保険は70歳まで加入(給与天引き)
また、ご存じの方も多いと思いますが、年金を受け取る年令になったあとも働き続ける方は、給与と年金額の調整が行われます。
70歳以降も引き続き雇用される方は、70歳時点で厚生年金の資格を喪失します
そして引き続き雇用されているという「70歳以上被用者該当届」を提出します。
(令和4年10月現在は、「厚生年金保険被保険者資格喪失届・ 70歳以上被用者該当届」となっていますが、当時は別々の様式でした)
70歳を超えているため厚生年金保険料の徴収はありませんが、年金額との調整のために届け出を行うわけです。
と、いうことは、その方が退職するときは何かしなくてはいけないはずなのですが・・・。
【こんな失敗をしました】
数ヶ月前に、72歳の顧問の方が退職されました。
健康保険の資格喪失届を提出し、退職後の健康保険の切り替えもご案内しました。
その月には他に数名の方が入退社され、いつも通り手続きを行いました。
健康保険組合や、年金事務所から送られてくる保険料の増減表も給与控除額と合っているし、手続きはもれなく行われていると思っていました。
忘れた頃に、その元顧問の方から「厚生年金が支払われない。どういうことだ?」
とご連絡が入りました。
「?」
(厚生年金・・・70歳以上・・・退職・・・)
キーワードが頭を駆け巡ります。
しばらくして、重大な届出忘れに気が付きました。
70歳以上被用者不該当届を出し忘れていたのです。
(こちらも令和4年10月現在は「厚生年金保険被保険者資格喪失届・ 70歳以上被用者不該当届」となっていますが、当時は別々の様式でした)
70歳以上被用者該当届は、
「この人は働いていますよ。このくらい収入があるので、年金と調整してください」という届出です。
退職したら「70歳以上被用者不該当届」を提出しなくてはいけません。
提出しないと、
「この人は退職したので、年金を満額支払ってください」
というサインが出ず、本人の年金が止まったままになってしまうのです。
【こうして後始末をしました】
・届出の遅れを平謝りし、70歳以上被用者不該当届を早急に提出しました。数ヶ月遅れになりましたが、御本人の年金が満額支払われることになりました。
・今回は「元顧問への失態」ということで親会社を巻き込んだ騒動になってしまって、始末書を書くことになりました。(どういった地位の方でもあってはならない届出忘れですが、二度とこの手続を忘れることはなくなりました)
【失敗の原因はこれ】
①70歳以上被用者不該当届の存在を忘れていた
当時は、この届出処理を行ったことがありませんでした。
もちろん、知識不足は御本人にはなんの関係もないことですし、人が退職するときに何も届出がないのはおかしいと気づかなくてはいけません。
②保険料の増減がないため、出し忘れに気が付かなかった
毎月、健康保険組合や日本年金機構から「保険料の納付書」や「保険料増減表」が届きます。
それを入退職者や、給与からの控除額と付き合わせて、届出モレや給与側の計算間違いをチェックしていました。
70歳以上の方の場合、保険料の控除がないため増減はありません。
「これをやっておけば届出忘れはないはず」という過信により、70歳以上被用者不該当届の出し忘れに気が付きませんでした。
【こんなことにも気をつけて】
①届出忘れは、時間が立ってから判明することが多い
こちらが出した届出の控え、年金事務所、健保組合からの送付物はすぐ出てくるように保管しておきましょう。
②入退職には必ず手続きが発生する
「やったつもり」になっていないか、初心に返って手順を確認しましょう。
③届出忘れや遅れ→収入に直結することを肝に銘じる
今回に限らず、お金に関係する届出忘れ、間違いによる遅延は、御本人の収入に直結します。
今回のような完全な失念は論外ですが、忘れずに手続きを取っていても給付まで時間がかかる場合は、御本人が不安になります。
予想よりも手間がかかる場合、役所側の手続きにより時間がかかってしまう場合などは必ずご本人に連絡しましょう。