社員100名程度、有期労働者を多く雇用している経営者の方からのお問い合わせです。
一方、有期労働者に私傷病休職の規定がなく、「欠勤14日が続けば原則として解雇」としています。
こういった運用は、同一労働同一賃金に問題ありませんか?
結論から言うと…
①有期労働者に対して私傷病の規定がないのは不合理な格差にあたります
②休職の期間、有給か無給かは、裁判などではケースごとに合理性が判断されます
パートタイム・有期雇用労働法(法の趣旨)
無期労働者と有期労働者の間には、仕事内容に変わりがなくても、待遇に差が生じているという不合理が長年問題となってきました。
その不合理を軽減するため、2013年にいわゆる同一労働同一賃金を制度趣旨として、労働契約法20条が施行されました。さらにパートタイム・有期雇用労働法が2020年4月に施行されました。
一番の焦点は、何が「不合理の格差」に当たるかどうか?です。
例えば、パートタイム労働者と正社員には給与や手当に格差がある企業が大半です。
正社員にはパート社員にはない転勤があったり、売上向上に向けてのマーケティング的な仕事をしたり、責任や知識に差があります。
だから、給与や手当に差をつけていると説明できればOKです。
同一労働同一賃金で「不合理な格差」に当たるかどうか争う場合、格差が問題となった労働条件ごとに、その趣旨、性質に照らしつつ
①仕事内容や責任の程度
②配置転換の範囲
③その他の事情を踏まえて判断されることとされています。
私傷病休暇制度は、法律上の問題となるか?
「私傷病休職制度」も、労働者にとって「退職して職を失うか?休みながら当面仕事を確保するか?」という生活に直結する問題であるためパートタイム・有期雇用労働法の問題となります。
病気休職について、厚生労働省のガイドラインでは「有期雇用労働者にも、労働契約が終了するまでの期間を踏まえて、病気休職の取得を認めなければならない」とされています。
裁判例では、下記のような例があります。
正社員と有期雇用労働者で、私傷病休職に「日数の差」をつけることは不合理とはいえない。
一方で正社員は有給で、有期雇用労働者は無休という労働条件の相違は不合理である。
(日本郵便事件・東京地裁H29.9.14)
無期雇用と有期雇用の間で、休職期間に差があることは認められるものの、そこには限度があるということが言えます。
厚生労働省ガイドラインでは、有期雇用契約の残存期間を踏まえるのが妥当とされているので、原則としてはそれに沿うのが通常です。
まとめ
有期契約労働者にどのような私傷病休職制度を設ければよいかについては、「どのくらい長く働いてほしいか?」という期待度が、無期雇用と有期雇用でどの程度違うのか、といった点など会社の文化などを考えて決定します。
その場合、
・認められる休職の期間
・日数
・有給と無休の取り扱い
についても考える必要がある。
今回の問題でいうと、「差をつけること自体は問題ないが、差をつけた理由を説明できるようにする」ことが必要となります。
「有期契約者に私傷病の規定がない」「14日で原則解雇」となる運用は、「不合理な格差」と判断される可能性が高いです。
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